『武士の家計簿』

Spread the love

『武士の家計簿』は予想に反して面白かったです。原作者が古書店で見つけた猪山家の入払帳や日記、手紙などから当時の御算用者の生活ぶりを描いたものです。描かれているのは、武士の中でも下級武士です。武士としての体面を取り繕うための経済的負担は大きく、その家計は借金まみれだったようです。これではいけないと家財を売り払い借金の返済に奔走するのですが、このあたりは何時の世も変わらないようです。何時の世も結局はお金なのかと、身につまされる内容でした。

とかくお金と言うのは魔物でして、いくらあっても足りる事はありません。お金以外の「もの」になりますと、限りがあります。食べ物であれば、どんなに高価な食材であっても、食べる事の出来る量は限られていますし、高価な宝石であっても、身につけられる量には限りがあります。その一方でお金はと言えば、預金通帳に書かれたたった一行の数字になってしまいます。

世の中色々な人がおりまして、それこそ借金などなんとも思わない人がいるかと思えば、たとえ100円であっても他人から借りるのは大嫌いと言う人もいます。借金を作ってまで体面を取り繕う事と、相応の暮らしを送ることのどちらが正解なのでしょうか。ただ、経済の事を考えれば後先考えずに借金をして派手な暮らしをするのが良い事なのです。皆が借金もせず、つましい暮らしをしているのが現在の状況です。そんな状況の中にあって政府が多額の借金を積み上げ続けているのが今の状況です。これはすなわち国民の大部分が借金を減らした為、その分を国が肩代わりしているに過ぎないのです。今こそ、みんなで借金をして派手な暮らしをすることがこの国を救う特効薬なのです。