高機能電卓で積分をやってみよう

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一般庶民が実生活で積分なんてやることはないです。だって変ですよね、家でビールを飲みながら積分やっていたら、気がふれたと思われるのがオチです。

気がふれたというのは少し大げさでも、「ねえママ、パパが積分やってるよ!」とガキに言われそうです。そんな一般庶民の事情は余所に科学技術はどんどん進んでおりまして、1990年代初頭には積分電卓はあったのではないでしょうか。積分電卓が出る前でもシンプソン法の定積分なら数十ステップのプログラム電卓でできましたので、そういった意味では1980年代初頭には紙を使ってゴシゴシ計算する時代は終焉を告げていたと言ってもよいのかも知れません。

このところ電卓のエミュを集めておりまして、数百ページもあるマニュアルを何とか読みこなしながら積分ができるところまでこぎつけました。そこで、電卓の積分がどこまで正確に数値をはじき出してくれるのか試してみることにしました。最初は電卓というには随分とゴツイTI92plusを持ち出しました。こいつは電卓というよりも数式処理機で、数値を算出するよりも数式の処理に重きが置かれている機械です。式の入力には少しだけ慣れが必要ですが、入力された式はきちんと数学自然表示に変換されます。

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今回は円周率を求める積分式を使ってみました。その結果がコレです。数式入力しEXECしたら瞬時にπと解が出てきます。一分の迷いもなく瞬時に出たところから察すると、TI92plusは円周率を導き出す積分式を知っているのではないでしょうか。知っているところに知っているままの式が入力されたので思うつぼだったのでしょう。そこで、他の式でも試してみることにしました。TI92plusは無限大の表現ができますので無限大を使った表現で円周率を求めてみました。というか、電卓で無限大が扱えるということ自体すごいことだと思うのですが。

 

 

20130615091924結果がコレです。さすがにシグマを使って円周率を求める方法は知らなかったようで、式の変形だけで終わってますね。それにしても恐るべし、高機能電卓の威力というところでしょう。

 

 

 

 

Screenshot_2013-06-15-09-24-35TIと双璧を成すと言っても差し支えないHPの電卓HP48sを使って円周率を求め、πとの差を求めてみました。

式の入力は対話式で行えるHPのほうが使いやすいですね。しかし、HP48sは無限大を取り扱えませんので、使える数式は限られてきます。まずは数式を入力して・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

Screenshot_2013-06-15-09-24-53一旦シンボリック展開をしてから・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Screenshot_2013-06-15-09-25-12数値を算出するという手順になります。積分値とπの値はピタリと一致しますので、HP48sも円周率を求める積分方程式を知っていると思われます。そういった意味では、この手の電卓にはさまざまな積分方程式がプログラミングされていると考えてよいのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

fx912さて、ここまで海外の電卓ばかり試してみましたが、国内の電卓も試してみましょう。積分機能のついた電卓は手元に一台しかありませんので、これで試してみます。日本の電卓メーカーの雄、CASIOが初めて世に放った数学自然表示方式の電卓、fx-912esです。入力の順序に少しだけ違和感を覚えますが、表示はわかりやすいです。

これまで試したTI92plus,HP48sとの決定的な違いは計算速度です。TIとHPはエミュですので速度の比較は適当ではないのですが、fx-912exは答えを出すまでかなりの時間を要します。しかも、内蔵されている定数のπとの差が見られます。数式処理に若干の問題を抱えていると言ってもよいのではないでしょうか。

そういえば、その昔アメリカのスペースシャトルにはHPの電卓が積み込まれていたと聞きます。シャトルのコンピュータに不具合があった場合、電卓を使って軌道計算を行わなければならず、これを誤ると帰還できない恐れがあり、絶対の信頼性が求められたそうです。そして条件に適ったのはHP41cという電卓で、日本製の電卓は候補にもならなかったとか。今回行った比較だけで優劣を決めるのは余りにも拙速ですが、プロと言われている人たちがHPやTIの電卓を選ぶ理由を垣間見たような気がします。