『流』

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流東山彰良氏の直木賞受賞作品『流』を手に取ってみました。台湾、中国と少しだけ日本が舞台となっている作品です。登場人物の名前がすべて中国名なのでなかなか登場人物がすっと頭に入ってきませんでした。主人公の秋生とその恋人の毛毛は登場回数が多いので頭に刷り込まれるのですが、同じ人物が異なった呼ばれ方をする場合もあり(これは中国の習慣なのかな?)、結構混乱しました。

さて、話は1970年代の中国と台湾が主な舞台で、主人公の秋生の生い立ち、そして秋生の祖父を殺めた犯人を秋生が突き止め、中国まで会いに行くまでを描いています。

一大叙事詩というと少し大げさですが、台湾と中国の微妙な関係、そして、隣国でありながら手紙のやり取りもできない特殊な関係がその背景も含めて丁寧に描かれています。また、徴兵制や軍隊での生活についても事細かに描かれています。そして、物語の要所で現れる狐火が少しだけ物語にアクセントを加えています。

『流』という小説ですが、何物にも似ていない作品です。面白いとかつまらないとか、そんな単純な言葉では言い表せない作品です。あえて言えばチアン・ユンの『ワイルド・スワン』にどこと無く雰囲気が似ていると感じますが、これとて中国が舞台となっており、そのエキゾチックな生活習慣や風習が描かれている、ただそれだけの接点しかないでしょう。

正直、私には難しい内容で、楽しめたかといわれればノーと答える他無いでしょう。それが偽らざる私の感想です。