ClassAAヘッドホンアンプを作る。その4、47式アンプとの比較、そして47式アンプ(改)の検討

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これまで、ClassAA回路の検討を行い、ChuMoyアンプとの比較を行いました。その結果、ClassAAアンプの優位性が確認できたのですが、オペアンプを使用したヘッドホンアンプのもう一つのメジャーな回路、47式との比較もしてみようと思います。

先ずは比較の対象となるClassAAアンプの回路です。電圧増幅部の非反転入力抵抗と負帰還量の若干の変更を行いました。これは反転・非反転入力の電位をできる限り一致させるための措置です。バイポーラ入力のオペアンプの場合は、入力抵抗のアンバランスにより出力にオフセットが出ることが分かりましたので、これをキャンセルする目的で行いました。入力インピーダンスの高いJFET入力のオペアンプでは、入力端子とグラウンドとの間の抵抗がアンバランスでも影響は小さいので、気分の問題ですが、一応そろえておきました。

ClassAAアンプ(一部定数見直し)回路図

次に47式アンプの回路図です。基本的な定数は上のClassAAアンプと同じにしました。47式アンプは不思議な回路(私の知識が中途半端ということもありますが)で、電圧増幅アンプとボルテージフォロワを直列に並べた形で、電圧増幅アンプへの帰還はボルテージフォロワの出力と電圧増幅アンプの出力を足し合わせたものを使います。二つのアンプを直列にして、二つ目のアンプから帰還させたら、発振してしまうのではないかと思いますが、47式アンプは発振しません。とても不思議な回路です。

R1とR3を介して電圧増幅アンプとボルテージフォロワの出力を足し合わせて帰還させています

なぜ47式アンプは発振しないのか?私には謎です。もしかすると、二つのアンプの出力を足し合わせるから発信しないのか?あるいは、R1とR3がダンピング抵抗として働くから発振しないのか?もし、前者ならR1を省略したら発振するはずです。後者ならばR1を省略しても発振しないはずで、R3の47Ωという値に妙があるわけで、設計者の知見には脱帽です。ということで、R1を省略した47式アンプ(改)も比較してみることにしました。

電圧増幅アンプの出力を帰還にブレンドするのをやめた回路です。発振するかも知れません。

ということで、三つの回路をLTspiceに入力しましたので、FFT解析結果を見てみましょう。先ずはClassAA回路のシミュレーション’結果です。

ClassAA回路FFTシミュレーション結果

奇数次の高調波ひずみはそこそこ出ていますが、偶数時の高調波はほとんど出ていないように見えます。ノイズも満足できるレベルに抑えられています。ヘッドホンアンプとしては十分な性能が出ていると思います。(あくまで机上のシミュレーションですけどね。)

次に、47式の回路のシミュレーション結果です。

47式アンプ、FFTシミュレーション結果

やはりClassAAよりも高調波ひずみが多く出ているように見えます。ただし、そのレベルは-80dB程度ですので実用上は問題ないでしょうし、聴感上も大きな問題とはならないでしょう。むしろある程度の高調波ひずみは音に艶を与えるという意見を聞いたこともあります。もしかすると、この辺りが47式アンプの魅力なのかも知れません。

次に比較するのは、帰還をボルテージフォロワの出力のみにして、電圧増幅アンプからの帰還を省略した47式アンプ(改)のシミュレーション結果です。果たして発振しないのか?先ずはそこが気になります。

47式アンプ(改)FFTシミュレーション結果

なんということでしょう、発振していません。ということは47Ωの抵抗がダンパーとして働いて発振を抑えているということなのでしょう。勿論LTspiceでのシミュレーション結果ですから、実際の回路でも発振しないという保証はありません。

しかも高調波ひずみはClassAAアンプよりも整理されているように見えますし、ノイズもClassAAより小さいように見えます。この47式アンプ(改)は実際に組んで試してみる価値はありそうです。ちなみにR3を省略すると発振してしまうことはシミュレーションで確認しました。改めてダンピング抵抗の重要性を認識しました。

なかなか部品が届かないので、シミュレーションを重ねていますが、47式アンプとの比較は有意義でした。今回の検討ではClassAAよりも47式アンプ(改)の方がひずみもノイズも少ないように見える結果が出ましたが、これはあくまでLTspiceを使ったシミュレーションの結果でしかありません、実際に組んだら発振して使い物にならないかも知れません。ただ、そのあたりも部品が揃ったら実際に組んで試してみたいと思います。

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