ClassAA回路で本当にひずみは減るのか?LTspiceでシミュレーションしてみました。

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Aクラスアンプに匹敵する低ひずみを実現したテクニクスのClassAAアンプ。このClassAAアンプでひずみが本当に減るのか試してみたくなり、とりあえずヘッドホンアンプを作ってみようと思うのですが、残念ながらまだ部品が揃っていません。部品が揃うまでの間、LTspiceという電子回路シミュレータを使ってClassAA回路でどれほどひずみが減少するのか試してみることにしました。

LTspiceはPC上で動作する電子回路シミュレータで、嬉しいことに無料で配布されています。そして、大部分の部品メーカーは、spiceモデルという部品の特性情報を提供してくれています。と、LTspiceについて書いていますが、私は今回初めてLTspiceを使いました。LTspice以外の電子回路シミュレータも使ったことがありませんので、本当に手探りでした。

ということで、LTspiceをインストールし、使用する部品(今回は日清紡マイクロデバイスのオペアンプNJM4580とNJM4556Aの二つ)のspiceモデルの入手し、回路の入力を行い、最終的に回路のシミュレーションまで行いました。LTspice初心者の私でもWeb検索を駆使しながら数時間で何とか結果を出すことができました。しかしながら、付け焼刃であることに変わりはありません。もしかしたら使い方が間違っているかも知れませんので、その点はご了承ください。

さて、先ずはClassAA回路をLTspice上で作ってみました。電圧増幅部にはNJM4580を、カレントドライブ部には力持ちなNJM4556Aを使用しました。また、電源はモバイルバッテリーで動作させることを考慮し、5Vとしました。正負電源は単純な抵抗分圧で作り、±2.5Vとしました。今回使うオペアンプはどちらも±2Vで動作しますので、動作要件は満たしています。そして負荷は手持ちのイヤホンのインピーダンス22Ωとしました。イヤホンのインダクタンス成分は一旦無視することにしました。ネット上ではコイルと抵抗を組み合わせてイヤホンの回路特性を再現されている方もいらっしゃいましたが、真似するにも面倒なので抵抗一本でイヤホンの代わりにしました。

実際に入力した回路がこれです。ClassAA回路の心臓部である4本の抵抗で作るブリッジの部分はネットから拾った定数をそのまま使用しました。

ClassAAっぽい回路

こうやって眺めてみるとClassAA回路はそれほど複雑ではありませんね。この回路を使ってシミュレーションしてみました。先ずは周波数特性から。上の回路図で電圧増幅部の負帰還部分に抵抗とパラでキャパシタが置かれていますが、これはノイズ抑制と発信防止の目的で何となく入れたものです。使っているオペアンプNJM4580は位相補償回路が内蔵されていますので、このキャパシタは不要ですが、何となくおまじない的に入れました。

先ずは周波数特性のシミュレーション結果から見てみましょう。

ClassAA回路(もどき)の周波数特性

この周波数特性はヘッドホンアンプとしては十分と考えてよいでしょう。下は一桁Hzから上は10KHzを少し上回るところまでほぼフラットです。20KHz辺りからダラダラと下がっていきますが、これは負帰還部分に入れたキャパシタの影響です。このキャパシタが無ければずっと上の周波数までフラットに伸びていきます。

次にFFTの解析をしてみました。これでひずみがどのくらい出るのか、わかるはずです。今回カレントドライブ部分に使用したオペアンプ、NJM4556Aはかなり力持ちなオペアンプなのですが、それでも22Ωのドライブはきついはずです。いきなり22Ωをドライブするのはひずみの増加を招くはずですから、負荷の影響を下げるため10Ωのダンピング抵抗を負荷に対して直列に入れました。

想像していのと少し違う結果が出ました

FFTのグラフを見たのですが、思っていたよりも盛大にひずみが出ているように感じましたひずみが出ている周波数を見ると、奇数次の高調波ひずみが結構出ています。三次の高調波ひずみは大体-50dBくらいなので、聴感上は問題にならないとは思いますが、ClassAAに抱いていた幻想は一瞬にして消え去りました。

さて、ClassAA(今回のはあくまでモドキです)ってそうでもないじゃん。と何となく思ってしまったのですが、本当に他の回路の特性と比較してひずみは減少していないのか、比較のためにシンプルなChuMoy回路(これもモドキです)をLTspiceに入れてシミュレーションしてみることにしました。

ChuMoy(モドキ)の回路です。負帰還部分などの回路定数は↑のClassAA(モドキ)と同じにしてあります。

オペアンプ一発で増幅をするChuMoy回路です。驚くほど簡単な回路です。周波数特性についてはClassAA(モドキ)回路と変わりがありませんので省略しました。そして肝心のFFT解析の結果はこうなりました。

ChuMoy(モドキ)回路のFFT解析結果

やっぱり、テクニクスは偉大でした。部品点数が多いClassAA(モドキ)に比較して、シンプルなChuMoy(モドキ)はノイズレベルは低く抑えられています。しかし、高調波ひずみに着目すると、ClassAA(モドキ)ではしっかり押さえられていた偶数次の高調波ひずみがグラフ上に出ています。また、奇数次の高調波ひずみもClassAAと比較して10KHz近辺から上の周波数でひずみのトゲトゲが沢山出ています。

テクニクスさんのうたい文句に偽りなしという結果を得ました。今回のシミュレーションはにわか作りですので、回路定数の追い込みはしていません(というか、私自身がどうやって良いのかよくわかっていない)ので参考にもならないかも知れませんが、興味深い結果が出たと思っています。部品が来るまでの間、もう少し煮詰めてみようと思います。

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