プッシュプル5パラのヘッドホンアンプと3パラの改造

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先日、プッシュプル増幅器を3つ並列させたヘッドホンアンプを作りましたが、これの発展形としてプッシュプル増幅器を5つ並列させた5パラのヘッドホンアンプを作ってみました。プッシュプル増幅器一つあたり、2個のトランジスタを使いますので、5つ並列にすると10個のトランジスタが必要となります。そして、これがステレオで2チャンネル分必要となりますので、合計20個のトランジスタがずらりと並ぶことになります。

いつも使っている5cm×7cmのユニバーサル基板に収めるため、今回はかなり窮屈な部品配置になります。3パラ機では左右チャンネルの間に空間を設けましたが、今回は左右チャンネルのマイナス側電源ラインを共有させることでスペースを節約しました。

そして、出来上がったのがコレ↓です。

5パラのヘッドホンアンプ トランジスタ20個実装です
この角度から見ると、小さいながらも壮観です

今回使用したトランジスタは、BC337とBC327のコンプリペアです。先日作った3パラ機に使用したS8050とS8550とはピン配置が逆ですので、見比べるとトランジスタが逆向きになっているのがお分かりいただけると思います。

OCL化改造を施した3パラ機

3パラ機の方には、OCL(アウトプット側のキャパシタを廃止)化改造を施しました。これは、電源投入時に出ていたポップノイズを無くすためです。出力を稼ぎたかったので大きめのキャパシタを使用しました。これの副作用として、出力カップリングキャパシタのチャージが完了するまでの間、直流電流がヘッドホンに漏れる現象が顕著になり、ポップノイズが出るようになりました。これを防ぐために出力側にリレーや、一時的に出力をショートさせる回路を入れればよいのでしょうが、いかんせんスペースに余裕がありません。苦肉の策として、電源回路を変更することで、問題の原因となっていた出力側のカップリングキャパシタを廃止しました。

今回作った5パラ機は3Wくらいの出力が出るはずです。しかし、電圧増幅部(プリアンプの機能)を省略した電力増幅だけのアンプですので、出力は入力側の機器の出力電圧に依存します。実際、ヘッドホンであれば音量に不足を感じることはありません。スピーカーを接続してみましたが、かなり大きな音が出ます。

今回作ったヘッドホンアンプですが、AB級のプッシュプル回路を複数並列接続して出力を稼いでいるというよりも、出力インピーダンス下げることで、負荷耐性を向上させたといった方が良いでしょう。市販のヘッドホンアンプを真似て作ってみましたが、非常に素性の良いヘッドホンアンプです。一般的な小型トランジスタであれば、そのまま差し替えて使える程オーソドックスで、安定性の高い回路です。心配していた熱暴走も起きていません。

オペアンプを使ったヘッドホンアンプも結構なのですが、今回作ったような回路であれば、負帰還も必要ありませんし、発振の危険性も非常に低いものです。そして、オペアンプに比較して出力電流が大きいこともメリットです。最初はオペアンプを使ったヘッドホンアンプを作って、それなりに満足していました。また、テクニクスのClassAA回路を真似た低ひずみなヘッドホンアンプを作りました。そして出力を増強するためにトランジスタを使ったバッファ段を付け加えました

いつの間にか、トランジスタのバッファ段だけを取り出してヘッドホンアンプとして使いました。そして市販のヘッドホンアンプの構造を真似て、トランジスタのAB級プッシュプル回路を複数並列させることで、更に出力に余裕を持たせたヘッドホンアンプにたどり着きました。満足できるヘッドホンアンプができましたので、小休止としたいと思います。