ヘッドホンアンプの電圧を吟味する

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試作二号機まで作成したClassAAヘッドホンアンプですが、前回から使用するオペアンプの吟味をしていました。その結果、電圧増幅アンプのキャラクタが全体を支配するという傾向を掴むことができました。オペアンプの違いによるアンプのキャラクターの変化というのは確かにあるのですが、その差は僅かなもので、ブラインドテストで使用されているオペアンプを言い当てることは不可能でしょう。ですからオペアンプ選びというのはどこかで終わりにしないとキリがありません。

入力オフセット電流のことを考慮すると、電圧増幅段はFET入力のものを、電力増幅段はそこそこ力のあるオペアンプという大体のコンセプトは決まりました。そして今回はオペアンプの動作電圧について吟味したいと思います。

オペアンプの動作電圧は、製品ごとに異なるのですが大体は±2V~±15V位ではないかと思います。データシートを見ると、±15で動作させたときの性能が記載されていることが多いように思います。これまでは12Vの電源を単純な抵抗分圧回路を使って±6Vの電源を作って動作させていましたが、本当にこれで良いのか、今一度最適な電源電圧を探ってみようと思います。

そこで登場したのがこれです。ステップアップコンバータモジュールで、2.5V~5Vの入力電圧を最大28Vまで昇圧してくれるモジュールです。非常に小さいモジュールで、小さなポテンショメータをくるくる回すことで出力電圧を変更することができます。ヘッドホンアンプの電源回路に使用したキャパシタの耐圧が25Vですので、最大25Vまで昇圧して検証してみました。

ステックアップコンバータモジュールです 1個60円程で売られていました

今回使ったオペアンプですが、電圧増幅にはJFET入力のLF412、電力増幅には大ベテランでバイポーラ入力のNJM4558を使用しました。この構成は、USB電源など電源電圧が低い場合何となく眠い感じの音になります。それもそのはずです、LF412は±3.5V、NJM4558は±4Vの電圧を必要とします。

LF412のデータシートより 最低電圧は±3.5Vですから7Vの電源が必要です
NJM4558のデータシートより こちらは±4Vですから8Vの電源が必要です

改めてデータシート見て驚きました。道理でUSB電源では眠たい音がするわけです。ということで、ステップアップコンバータを組み込んでの動作チェックです。

ClassAAヘッドホンアンプの電源部にステップアップコンバータを取り付けました

先ずは24Vまで電圧を上げて検証しました。音量を上げても音割れはしません。低い電圧で動作させたときは眠たい感じの音で、音量を開けるとザラついた感じの音になっていたのですが、24Vまで電圧を上げるとざらついた感じもなくなり、全体にシャキッとした感じです。これまでNJM4558に良い印象が無かったのは電源電圧が十分ではなかったからでしょう。

次に音量を高く保ったまま電源電圧を徐々に落とし、どのくらいでひずみが出始めるのかを確かめてみました。その結果、16V位まではザラついた感じのひずみは生じませんでしたがそれ以下になると徐々にではありますがひずみを感じるようになりました。

ということで、電源電圧は16Vということにしたいと思います。なお、今回使用したステップアップコンバータですが、昇圧する際にノイズを発生します。このノイズは電源を通じてヘッドホンアンプに流れ込んでしまいます。しかし、このノイズ(オシロスコープで見てみると300Hzくらいのノコギリ波です)は、ヘッドホンアンプ回路上に設けたパスコンで吸収されているようで、オペアンプの電源端子には到達していませんでした。もちろん、出力にも漏れていません。

検証に使用したオペアンプ LF412とNJM4558です ロートルコンビですが、電源がきちんとしていれば、いい仕事をしてくれます 魅力を再発見しました