ClassAAヘッドホンアンプを作る。その3、オフセット対策

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このひとつ前の記事でオフセット対策をしたのですが、シミュレーションしてみると、オフセットのキャンセルが今一つ上手くいっていないようで、ほんの僅かではありますが出力がオフセットされています。一度は出力側にカップリングコンデンサを設けて、オフセットをキャンセルしようかとも考えましたが、音質的にはあまり好ましい方法ではありませんし、もう少しできることがあるのではないかと考えました。

そこで、奥の手を使うことにしました。入力オフセット電流が少なく、入力インピーダンスの高いオペアンプを使えばオフセットのキャンセルは容易なはずです。

オフセット電流の少ないオペアンプといえばJFET入力のオペアンプです。そこで手持ちのJFET入力のオペアンプLT072を使ってみることにしました。TIのオペアンプの情報はLTspiceには入っていませんので、TIのホームページからダウンロードするところから始めました。

TL072の動作電圧も±2.25Vですので、ギリ モバイルバッテリーで動作しそうです。それから、前の回路でちょっと気になっていたノイズも何とかしてみることにしました。恐らく前の回路では負帰還や入力部分に値の大きな抵抗器を多用していたので、熱雑音がそれなりに出ていたのではないかと推察しました。そこで、信号経路の抵抗も今一度検討し直すことにしました。

以上の方針でLTspiceに入力した回路が下の図です。ClassAAの心臓部のホイトストーンブリッジはそのまま手つかずです。

オフセット対策とノイズ対策を施した回路です。

電圧増幅アンプの非反転入力に入っていた2本の抵抗は1本に改め、抵抗値も見直しました。併せて負帰還回路の抵抗値も改め、負帰還抵抗とパラに設置したキャパシタも幾分大きめのものにしました。電源電圧はとりあえず30Vとし、これを分圧して±15Vでシミュレーションをしました。

先ずは出力波形を出してみました。見事にオフセットはキャンセルされています。これは偏にTL072の入力オフセット電流の小ささによるものと思います。データシートによるとTL072の入力オフセット電流は、標準値で±0.5pAです。最大値でも±120pAです。前の回路で使っていたNJM4580の入力オフセット電流は、最大で500nAですので、最大値で比較するとTL072に取り換えるだけで、ざっくり4000分の1になる計算です。JFETの真骨頂というところでしょうね。

0Vを挟んで上下の振れがぴったり一致しています。オフセットは皆無です。

気持ちよくオフセットが解消されていることを確認しましたので、次に周波数特性のシミュレーション結果を見てみましょう。負帰還回路のキャパシタを大きめにしましたので、高い周波数が減衰するはずです。カットオフ周波数が可聴域に掛からないように値を決めたのですが、結果はどうでしょうか。

ヘッドホンアンプとしては十分な周波数帯域を確保できたと思います。

ヘッドホンアンプとしてなら十分な周波数特性でしょう。位相の方も余裕がありますので、発信の心配はしなくてよさそうです。

次に、ノイズの方をシミュレーションしてみました。シミュレーション条件として出力が飽和するときの5%の電圧の1kHz正弦波を入力したときの出力でシミュレーションしてみました。グラフ上では奇数次高調波と、負帰還抵抗がブリッジを構成する抵抗に比較して極端に大きいために起きる反射が原因と思われるスパイク状のノイズが気になるものの、全体的にノイズは十分低い水準に抑えられていると思います。

高調波とスパイク状のノイズが気になりますが全体的にノイズレベルは低く抑えられていると思います。

NJM4580と比較してTL072の方が入力換算雑音が小さいことも要因かと思いますが、信号経路上の抵抗値を見直したことによる熱雑音低減の効果もあると思います。

机上でのシミュレーションの結果ではありますが、満足できる成果が出せたと思います。これにて一旦回路の検討は終了とします。あとは部品の揃うのを待って、先ずはブレッドボード上で動作させてみたいと思います。

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